医療コラム

タバコの害と禁煙治療

タバコの害と禁煙治療


本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

タバコは、16 世紀以降全世界に広がり、20世紀に紙巻きタバコが大量生産されるようになってから多くの人が喫煙するようになりました。しかし、体に有害であるという報告が次々と発表されてから欧米でタバコの規制が始まり、喫煙率が急激に低下しました。

 

日本ではタバコ対策が欧米に比べ10~30年遅れているといわれており、タバコの有害性に対する認知度も低いのが現状です。外国では、タバコのパッケージに「喫煙は、致命的な肺癌を引き起こす」などのメッセージとともにショッキングな生々しい写真が掲載され、タバコの値段も高価です。日本では、国がたばこ産業を保護する立場にあり、また、たばこ税を安定した税収として重要視していることが、欧米に比べタバコ対策が大幅に遅れている原因の1つと言われています。


今回、タバコが値上げされましたが、喫煙者を大幅に減らし、国民の健康を守るためには、1箱1000円程度に値上げすべきだという意見もあります。タバコの煙が直接影響するものとして、喉頭癌、肺癌、食道癌などがあり、肺の老化が急速に進んでCOPDになってしまうこともあります。その他多くの癌が発症しやすくなります。また、喫煙者は血管がつまりやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞などで急死したり、手足が腐ってしまうこともあります。血管がぼろぼろになるため、皮膚や眼などを含め、全身の臓器に影響が及びます。2004年に発表された論文によると、タバコを吸う人は吸わない人に比べて寿命が平均で10年も短いことが分かりました。周りの人もタバコの煙を吸い込んで同じような害を受けることが知ら
れており、特に子供や妊婦の前では絶対にタバコを吸ってはいけません。


タバコをやめられないのは、麻薬と同じで離脱症状が出てしまうからです。そのため、喫煙本数が多く依存性の高い喫煙者は「ニコチン依存症」という病名で、保険診療にて禁煙治療ができることとなりました。従来のニコチンパッチよりも有効性の高いチャンピックスという内服薬も使用できるようになり、禁煙の成功率が高くなってきていますので、喫煙者は禁煙治療をお受けになることをお勧めします。