医療コラム

咳のお話①〜咳の重要な役割とは?〜

咳のお話①
〜咳の重要な役割とは?〜

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
 本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

今回は咳についてのお話です。咳が出ると、眠れなかったり胸が痛くなったりつらいため、悪者扱いされますが、咳にも重要な役割があります。それは「肺炎の予防」です。

 

ウイルスや細菌などの病原体がのどや気管支に入り込んできた時、それを痰として外に排出するために出るのが咳です。痰が出るようになったら、咳をたくさんして、たまっている痰をなるべく全部出してしまった方が早く治り、肺炎も起こしにくくなります。

 

注意しなければいけないのは、咳をするとウイルスや菌が飛び散って他の人に移してしまうことです。「風邪を他人に移せば治る」という迷信がありますが、これは、咳をすると、自分が治る頃に他人が風邪を引いてしまうところから生まれたものかもしれません。もちろん他人に移したから治るわけではないので、咳が出る方はマスクをし、咳をする時はハンカチなどで口元を押さえて、飛び散るのを防ぐようにしましょう。これを「咳エチケット」と呼んでいます。

 

肺機能が低下し、咳を出す力が弱い方が全身麻酔で手術を受けると、術後に肺炎を起こしやすいことが知られています。そのような方は、咳を出すトレーニングを十分に行ってから手術を受けると、肺炎の危険性を減らすことが出来ます。

 

高齢者や脳梗塞の方は、食べ物を誤嚥しやすく、咳をして外に出す力も弱いため、口の中の雑菌が容易に気管の中に入り込み、肺炎を起こしやすくなります。このような方が、唐辛子に含まれているカプサイシンや、ACE阻害薬という降圧剤を摂取すると、咳を起こしやすくなり、肺炎の発症率が減ることが分かっています。

 

咳がなかなかおさまらない場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。次回は、咳が長引いた時にはどのような病気が考えられるか、また、それをどのように見極めるか、について説明します。