医療コラム

老化による皮膚のカサカサとは…②

老化による皮膚のカサカサとは…②

前 新潟大学医学部皮膚科学教室 講師
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
渡辺 力夫

 

前回のこのコラムにて、老化による皮膚のカサカサは「乾皮症または皮脂欠乏性湿疹(皮膚炎)」と呼ばれる病態であることと、それらの原因と症状について説明しました。今回は、それらに対する治療法や、日常生活における注意点について述べたいと思います。

 

まず、皮膚の乾燥により乾皮症が生じ、かゆみを伴うために引っ掻くことによって、湿疹化していくことを理解する必要があります。したがって、低湿度な環境や過度の洗浄による乾燥に注意しなければなりません。高齢者では、環境の整備や外用時の介助など、家族の協力が不可欠であることも多いです。
乾皮症に対しては、ワセリンなどの油脂性軟膏や保湿・吸水能を有するヘパリン類似物質などを、乾燥の程度に合わせて1日1〜2回外用します。外用剤は、皮膚表面に被膜を形成して皮膚を保護し、水分の蒸発を防ぎます。


入浴後は、しっとりとした皮膚に水分を閉じ込めるように、10〜20分以内に外用すると良いでしょう。皮脂欠乏性湿疹に対しては、症状に応じて副腎皮質ステロイド外用剤を併用することもあります。

既に生じてしまった皮膚の炎症を抑えるためです。軽快後は、前出の保湿剤だけに変更します。かゆみが非常に強い場合には、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服を併用します。掻くことによる更なる悪化を防ぐためです。


日常生活では、皮膚の清潔と潤いを良好な状態に保つスキンケアが重要です。入浴はぬるめとし、石鹸は過度に使用しないようにします。ナイロンタオルは使用せず、手のひらなどでやさしくこするようにします。過剰な暖房を避け、低湿度にならないように加湿器を併用します。電気毛布やこたつは、皮膚の乾燥の原因となることも知っておくと良いです。


たとえ老化による皮膚の症状であったとしても、その患者にとっては重大な悩みである場合も多々あります。受診時に「老化」と言われて単に流されてしまい、事務的に薬だけを処方されるのでは理解しにくいとも思われます。診断名、原因、治療法を詳しく説明してくれる医療機関の受診を、お勧めしたいと思います。