医療コラム

スウェーデンからの贈り物~タクティールケア①~

スウェーデンからの贈り物
~タクティールケア①~

医療法人新成医会 
総合リハビリテーションセンター みどり病院
JSCIシルヴィアホーム
認知症緩和ケア・介護教育研修センター
インストラクター リーダー 木本明

 

手は、私たちに多くのことを伝えてくれます。「熱い」「冷たい」「やわらかい」「硬い」など、さまざまなことを手で知ることができます。

 

子どもの頃、高い熱を出し辛いとき、母は私の額に手を置いてくれました。母の手は冷たく、その手の冷たさが心地よかったことを覚えています。具合を確かめるために額に置いた母の手が、私には心地よさと安心として伝わりました。この心地よさと安心を、肌と肌との触れ合いを通して伝えるのがタクティールケアです。

  

初めてタクティールケアを学んだとき、そして今インストラクターとして各地で指導をしているとき、私は母の少しゴツゴツした手を思い出します。それはとても懐かしく、母から本当に深い愛情をもらったと感じています。そもそもタクティールとは、ラテン語の「タクティリス(Taktilis)」に由来する言葉で、「触れる」という意味があります。その意味が示すように、手を使って10分間程度、相手の背中や手足を「押す」のではなく、「やわらかく包み込むように触れる」のがタクティールケアです。

 

このケアは、手の持つ力を再認識させてくれます。そして誰にでもできるとても身近なケアです。今、このケアが医療、福祉の現場で広がり始めています。もちろん新潟市内でも取り入れている施設があります。

 

そのひとつが医療法人新成医会総合リハビリテーションセンターみどり病院です。みどり病院では、主に認知症の方のケアの中で、タクティールケアを活用しています。

 次回からタクティールケアについて、より具体的に紹介していきたいと思います。

 

 (注) 「タクティール」はJSCI日本ス ウェーデン福祉研究所の商標登録です。
※本コラムの無断転載、転用は 固く禁止します。

循環器専門医とは?

循環器専門医とは?

済生会新潟内科診療所
(新潟市中央区田町1丁目 旧済生会新潟病院)
  所長 医師 岡村和気 
日本循環器学会認定 循環器専門医 

 

 

循環器専門医とは?と聞かれ、すぐに「心臓を診る医者」と言葉が出てくる方は少ないのではないでしょうか。

  

より正確には、循環器専門医とは「心臓と血管を診る医者」を指す言葉です。日本循環器学会では「循環器専門医は、心臓・血管系に関する豊富な知識と技能を有し、心筋梗塞、狭心症、高血圧、動脈硬化、弁膜症、心不全、不整脈、などの循環器疾患の適切な診断・治療及び予防ができる能力を有する。」と述べられています。

 

専門医を取るためには、内科の認定医もしくは専門医の取得(内科全般から出題される試験に合格する必要があります)と、数年間の循環器の研修を行い、循環器専門の試験を受けて合格した医師を循環器専門医と言います。

 

新潟県では2011年10月現在145名います。循環器専門医を持っている医師は、通常の内科の疾患を診ることに加え、コントロール不良な循環器疾患 ―狭心症、高血圧、心不全、不整脈など― を持つ患者さんを他科の医師から紹介され、より強い薬などを使用してコントロールを行います。

今の季節、循環器疾患の中でも特に注意していただきたいのは高血圧です。
通常はほとんど症状を自覚することはありませんが、合併症が起こると大きな代償を払わなければなりません。

 

脳出血、脳梗塞などはマヒが残り、心筋梗塞などではその後の日常生活に支障をきたすこともあります。重大な合併症が起こる前に、血圧が高めの人は早めの受診をお勧めします。

 

※ 本コラムの無断転載、転用は固く禁止します。

白内障 後半

白内障 後半

いかい眼科 院長 井海雄介
(新潟市中央区田町 済生会新潟病院跡地)
㈳日本眼科学会認定 眼科専門医 

 

今回は白内障の治療について説明します。

 

白内障の治療は、おおまかに2種類に分類されます。点眼薬などによる保存的な治療と、手術による外科的治療になります。白内障がそれほど進行した状態ではなく、自覚的にも今のままで不自由ない状態であれば、進行予防のための点眼薬を処方し、定期的に経過観察をして視力検査などを続けることになります。そして、適切な時期が来れば手術も考慮することになります。しかし、視力低下が著しい、進行してしまっている白内障に対しては手術的治療が必要となります。手術の適応の時期に関しては、以前よりいろいろな考え方がありました。全然見えなくなってから初めて手術を考えたほうがいい、と言われていたこともありましたが、進行した白内障は手術が非常に難しく、合併症の起きる可能性も高くなります。

 

そのため、あまり進行していない、まだ手術が難しくならない時期に手術をやってしまうのも、手術の安全性の面からは勧められると思っています。また、どのぐらいの視力に下がったら手術の時期ですか?とよく患者さんに聞かれるのですが、御自身で見えにくさを感じ始め、このままでは不自由だと感じたら手術を考えましょう、とお答えしています。また手術後に遠くが見えるようにしたいのか、近くが見えるようにしたいのか、など、希望に応じて、眼の中に置いてくる眼内レンズの度数を調節したりもします。いずれにしても、患者さんがどの程度困っているのかを話し合い、患者さんとよく相談したうえで手術に向かうようにしています。

 

最後になりますが、白内障だけに限らず、ドライアイ、緑内障、加齢黄斑変性症、網膜はく離など、加齢により、さまざまな眼の病気が出てきます。眼が見えないと、日常生活が楽しくなくなりますし、眼の健康は生活の質の改善につながります。なにかお困りのことがあればお近くの眼科を受診していただき気軽にご相談ください。

白内障 前半

白内障 前半

いかい眼科 院長 井海雄介
(新潟市中央区田町 済生会新潟病院跡地)
㈳日本眼科学会認定 眼科専門医 

 

⒈白内障とは
 目の中には水晶体という無色透明な組織が存在しています。正常であれば透明であるはずの水晶体がさまざまな理由により濁ってしまうと白内障になります。白内障の原因としては、老人性白内障(加齢性白内障)が大部分を占めますが、糖尿病やアトピー性皮膚炎などの全身疾患に伴う併発性白内障、あるいは先天性白内障、外傷性白内障、などがあります。だいたい50歳以上で半数、60歳をすぎると7割以上の人は白内障にかかります。原因である水晶体の濁りのタイプは、さまざまで、自覚的に症状を感じるものと、あまり気にならないタイプのものがあります。

 

⒉白内障の症状
 一般的に白内障はゆっくり進行してくるため、自覚症状が出にくいようです。しかし、白内障の進行具合がある一定の限度を超えると、視力低下を感じるようになります。かすむ、ぼやける、などが白内障の主な症状ですが、夜間や雨天に車のライトや信号がボヤケル、二重になるなど光のにじみを感じる(白内障による光の乱反射が原因)、天気のいい昼間もまぶしさを感じる、明るさのコントラストが低下する、遠方が見えにくくなる、視力が良くてもかすみ感を強く感じる、などの多彩な症状が現れます。ちなみに、目の充血やゴロゴロ感、かゆみ、などの症状は白内障の症状ではありません。それらは別の眼病の可能性が高いです。

 

⒊白内障の検査
 眼科で一般的に行われる検査で白内障の進行度はすぐに診断できます。視力、眼圧などの一般検査のほか、眼底検査などをおこない、眼球全体に病気がないか確認します。白内障以外に視力低下の原因がない場合は白内障の治療を開始することになります。

咳のお話②〜咳が長引く原因とは?〜

咳のお話②
〜咳が長引く原因とは?〜

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
 本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

風邪を引いた時、熱、痰、鼻水、のどの痛みなどの症状がおさまっても、咳だけがしばらく続くことがあります。風邪自体は、通常、数日から1週間くらいで治るのですが、咳はいったん出ると長引くことがあり、感染後咳嗽と呼んでいます。これであれば徐々に改善し、いずれはおさまりますが、なかなか改善しない場合は、肺癌や肺結核など、肺に陰影の出る大きな疾患がないか、念のため胸部X線検査を行います。異常がない場合は、以下の手順で診療を行います。


 

咳が長引く場合、気管支喘息であることが最も多く、これは気管支拡張薬が良く効くため、気管支拡張薬を使用してみて、明らかに咳が減少するようなら気管支喘息と診断できます。アトピー咳嗽という、気管支拡張薬の効かないアレルギー性の咳もあります。気管支喘息、アトピー咳嗽は、夜間から明け方にかけて悪化しやすく、冷気や乾燥した空気を吸い込んだ時、話しをしている時に咳が出やすい傾向にあり、風邪を引く度に悪化して咳が出る人もいます。

 

気管支炎や肺炎を起こすと、通常、咳だけでなく、発熱、黄色い痰を伴いますが、マイコプラズマ、クラミジア、百日咳などが原因の場合、熱や痰に乏しく、咳だけが持続することがあります。鼻水を伴う場合は、副鼻腔に炎症を起こして膿がたまっているか、鼻のアレルギーが考えられ、胸やけがある場合は、逆流性食道炎(胃酸が胃から食道に逆流して食道に炎症を起こす病気)による咳の可能性が高くなります。また、薬の副作用で咳が出ることもあります。

 

咳が長引く原因はたくさんあり、血液検査や胸部X線、痰検査など精密検査を行っても診断に結びつかないことが多く、症状や経過などを詳細に検討し、病状に合った治療を行う必要があります。1回の診察・治療で良くならないことも多いため、呼吸器内科の専門医に根気強く通院して治療してもらうと良いでしょう。

咳のお話①〜咳の重要な役割とは?〜

咳のお話①
〜咳の重要な役割とは?〜

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
 本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

今回は咳についてのお話です。咳が出ると、眠れなかったり胸が痛くなったりつらいため、悪者扱いされますが、咳にも重要な役割があります。それは「肺炎の予防」です。

 

ウイルスや細菌などの病原体がのどや気管支に入り込んできた時、それを痰として外に排出するために出るのが咳です。痰が出るようになったら、咳をたくさんして、たまっている痰をなるべく全部出してしまった方が早く治り、肺炎も起こしにくくなります。

 

注意しなければいけないのは、咳をするとウイルスや菌が飛び散って他の人に移してしまうことです。「風邪を他人に移せば治る」という迷信がありますが、これは、咳をすると、自分が治る頃に他人が風邪を引いてしまうところから生まれたものかもしれません。もちろん他人に移したから治るわけではないので、咳が出る方はマスクをし、咳をする時はハンカチなどで口元を押さえて、飛び散るのを防ぐようにしましょう。これを「咳エチケット」と呼んでいます。

 

肺機能が低下し、咳を出す力が弱い方が全身麻酔で手術を受けると、術後に肺炎を起こしやすいことが知られています。そのような方は、咳を出すトレーニングを十分に行ってから手術を受けると、肺炎の危険性を減らすことが出来ます。

 

高齢者や脳梗塞の方は、食べ物を誤嚥しやすく、咳をして外に出す力も弱いため、口の中の雑菌が容易に気管の中に入り込み、肺炎を起こしやすくなります。このような方が、唐辛子に含まれているカプサイシンや、ACE阻害薬という降圧剤を摂取すると、咳を起こしやすくなり、肺炎の発症率が減ることが分かっています。

 

咳がなかなかおさまらない場合は、重大な病気が隠れている可能性があります。次回は、咳が長引いた時にはどのような病気が考えられるか、また、それをどのように見極めるか、について説明します。

気管支喘息とスポーツ

気管支喘息とスポーツ

本町通6アーケード内ぷらっと本町ビル3階
本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

気管支喘息というと、ゼーゼーという発作を起こし、夜中でも病院に行って治療を受け、運動はあまりできないという虚弱なイメージがあるのではないでしょうか。

 

確かに、喘息患者さんの中には、運動をすることにより喘息発作を起こしてしまう方がいます。しかし、しっかり治療すればスポーツは十分可能であり、喘息であるからこそ、気管支を鍛え、発作を起こしにくくするためにスポーツを始める方もいます。

 

気管支喘息の治療をしながら競技を続け、オリンピック出場を果たした選手も多く、スピードスケートで金メダルを獲得した清水宏保選手もその1人です。

 

一方、突然の大発作で息ができなくなり、窒息死する人は、以前に比べて大幅に減少したとはいえ、まだ大勢いるのも事実です。これは、若い人や、しばらく喘息発作がなく安定していた方でも起きています。知っている人が喘息発作のため突然亡くなった、という経験のある方もいらっしゃると思います。ほとんどはきちんと治療していれば防げたと思われるため、病状が軽くても油断せずきちんと治療することが重要です。


喘息発作には、以前から気管支拡張剤の吸入や点滴が行われており、これでおさまることが多いのですが、気管支喘息の病気の本質は気管支の炎症であり、これを抑えることが重要であることが分かってきました。発作時には炎症を抑えるためにステロイド剤を点滴や内服薬で使用しますが、この薬は副作用の問題があるため、普段は長期に使用しても副作用の心配のないステロイド吸入薬を使用します。ステロイド吸入薬が普及するにつれ、喘息発作で救急外来を受診したり喘息死の患者さんが少なくなってきています。


現在、喘息治療の目標は、全く症状がなく、日常生活や仕事、スポーツも健常人と変わらずできるようにすること、となっており、治療の進歩と共にそれが可能となっています。喘息の原因は、家のほこりの中に含まれるハウスダストやダニ、ペット、食べ物、職場環境など様々です。


喘息で悩まれている方は一度、呼吸器専門医の受診をお勧めします。

目ぐすり

目ぐすり

しもまちメディカルセンター(旧済生会新潟病院あと)
いかい眼科・済生会新潟内科診療所併設/
しなの薬局グループしもまち薬局/日本薬剤師会認定薬剤師/
実務実習指導薬剤師    井海由紀子

 

ある日の薬局での患者さんとの会話です。
「○○さん、何かお使いのお薬はございませんか?」とお伺いする私。
「飲んでいません」と返事がかえってきました。
「では、めぐすりはお使いではございませんか?」と更にお聞きすると、「うん、白内障と緑内障の目薬を使っているよ」と、明るくお答えになる患者さん。
〈目薬は薬ではない〉〈目の病気は内服薬とは関係がない〉と考えていませんか?

目薬も立派なお薬です。緑内障といって、目の中の房水が多すぎて圧力がかかっている方、物を見る為の神経が弱くなっている方は、毎日目薬を使用して眼圧をコントロールする必要があります。この緑内障の方の中には飲み合わせの悪い飲み薬があります。

 

また、喘息をお持ちの方、心臓の病気をお持ちの方では一部ご使用になれない目薬もあります。
ぜひ目の治療を行っている方で内服薬を服用している方、これから眼科を受診しようと考えている方は、今服用しているお薬について、また、ご自身の体質について、医師・薬剤師にお知らせください。

 

その他、患者さんから、「点眼が上手くいかずに目から液があふれた!」「眼を上手く開けられない!」と、点眼の方法について非常に多くのご相談を受けます。

 

実は、点眼方法は何種類もあるのです。

薬剤師があなたに合った点眼方法をお探しします。
また、点眼補助器具もございます。
どうぞお気軽にお問合せください。

あなたの肺年齢は何歳ですか?〜COPDについて〜

あなたの肺年齢は何歳ですか?
〜COPDについて〜

 

本町通6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
本町いとう内科クリニック 院長 伊藤実
日本呼吸器学会認定 呼吸器科専門医

 

皆さんはCOPD(シーオーピーディー)という病気をご存じですか。

 

COPDは、タバコが原因で肺の破壊が少しずつ進行し、徐々に息切れが強くなり、寝たきりになったり死に至ることがある恐ろしい病気です。この病気で亡くなる方がとても増えており、主要な死因の1つとなったため、最近はテレビなどでも取り上げられることが多くなりました。

 

COPDの症状は、じっとしていると何ともないが、動くと息苦しくなるのが特徴で、まず階段や坂道で息切れする、というところから始まり、進行してくると少し動いただけでも苦しくなり、筋力・体力が低下してきます。息切れの進行はゆっくりであるため、自分が病気であることに気づきにくく、病院を受診した時には肺が破壊し尽くされ、余命わずか、ということも少なくありません。また、心筋梗塞、脳梗塞、骨粗鬆症など、肺以外の多くの病気と密接な関係にあることも分かっています。

 

COPDをできるだけ早く見つけるために、最近、「肺年齢」が考え出されました。これは、肺機能検査の結果を分かりやすく伝えるため、肺機能が何歳の人と同じくらいなのかを示したものです。肺年齢が実年齢よりも高いと、肺の破壊がすでに始まっていることが分かります。肺年齢を測定することにより、COPDを未然に防いだり、早期発見・早期治療に結びつけることができます。特にタバコを吸っている人は自分の肺年齢を知っておくことが重要です。

 

治療は、禁煙、薬物療法、肺の理学療法、運動療法、栄養療法、酸素療法など、多岐にわたります。早めに治療を開始することで、生き生きとした生活を長く続けることができますので、咳や痰がなかなかおさまらなかったり、階段や坂道を上るだけで息切れがする方は呼吸器の専門医を受診し精査・治療を受けることをお勧めします。

認知症 ②

認知症 ②

 

総合リハビリテーションセンターみどり病院
副理事長 内科医 市原綾子

 

先月号「正常な老化(ぼけ)と認知症は異なる」と記しました。
  
認知症には正常な老化(ぼけ)とは異なる特徴が見られます。認知症の早期
発見と、早期受診につなげることが大切です。
  
最近では、ごく軽い物忘れの方が、専門の医療機関を受診されることも増えてきています。早期から適切な薬や認知症ケアを受けることで、認知症の進行を遅らせ、介護する側に負担が掛かるような、せん妄や興奮といった症状を抑えることが可能です。
  
アルツハイマー病を代表とする認知症は、ゆっくりと進行する病気です。
  
認知症の方やご家族が、できるだけ長く穏やかな生活を続けるためにも、早期から、医療や認知症ケアが介入することが重要なのです。