医療コラム

よく眠るためのコツ

よく眠るためのコツ

 

本町通6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器科専門医

 

 睡眠障害は、心身に重大な影響を及ぼします。そこで、今回は、よく眠れる方法について説明します。
 眠くないのに床に就き、がんばって眠ろうとすると、かえって寝付きにくいことが分かっていますので、そのような時は、いったん布団から出て、静かに読書するなどして、眠くなってきたら床に就くようにするとうまくいくことがあります。
 眠れない人ほど、たくさん眠らないといけない、という思いが強く、早く床に就く傾向がありますが、かえって寝付きが悪くなり、逆効果です。
 睡眠時間を気にする人もいますが、必要な睡眠時間は、個人差がかなり大きく、歳をとると短くなる傾向があり、必要な睡眠時間以上眠ろうとしていることが眠れない原因のこともあります。

 朝は毎日同じ時刻に起きることにより、夜、よく眠れるようになります。
 寝る前には、カフェイン摂取、喫煙、熱いお風呂、パソコンやスマートフォンなど、交感神経を刺激するものや光刺激を避け、軽い読書、音楽、ぬるめの入浴などを心がけると良いでしょう。
 昼寝をする時は、遅くとも午後3時まで、30分以内にします。
 それ以上長かったり、遅い時間に昼寝すると夜の睡眠を妨げます。
 どうしても眠れず睡眠不足となって困っている時、寝酒よりは睡眠薬の方が安全で有効です。
 寝酒は、寝付きは良くなりますが、眠りが浅くなってしまうこと、飲酒量が徐々に増えてしまう傾向があるため、避けた方が良いでしょう。
 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感があったり、十分眠っているのに日中の眠気が強い時は、精査・治療が必要となりますので、医療機関を受診してください。

『お薬手帳』って本当に必要なの?

『お薬手帳』って本当に必要なの?

 

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル1階
 しなの薬局 本町店 薬局長 田中 悠介
日本薬剤師会 認定薬剤師

 

「お薬手帳はお持ちですか?」処方せんを持って薬局を訪れた際に、このように聞かれたことがある方は多いのではないでしょうか。
 今回は、『お薬手帳』がなぜ必要なのか、ご説明します。
 『お薬手帳』の役目の一つとして、お薬の「飲み合わせ」を確認できるということがあります。
 一つの医療機関だけではなく、複数の医療機関を受診される患者さんの場合、一緒に服用してはいけないお薬が出ることが時々ありますので、受診の際、『お薬手帳』を医師・薬剤師に見せることで、「飲み合わせ」による副作用を未然に防ぐことができます。
 また、最近ではジェネリック医薬品の普及も進み、同じ成分で、名前が違うお薬も数多く出回っているため、同成分の薬の重複投薬も心配されますが、『お薬手帳』を見せることで重複して服用することも防ぐことができます。
 そして何よりも東北地方太平洋沖地震の際、お薬を持ち出すことができず、服用していたお薬の名前がわからなくなってしまった方の中で、『お薬手帳』がカバンに入っていたおかげで薬の名前がわかり、服用を続けることができたということがありました。
 このような事例を機に、『お薬手帳』を患者さん全員に持って頂こうといった改正も行われています。
 『お薬手帳』はただ持っているだけでは効果を発揮できませんので、医療機関を受診される際は必ず医師・薬剤師に見てもらい、また、いざというときにはすぐに持ち出せるようにしておきましょう。
 しなの薬局の『お薬手帳』は、アレルギー歴、副作用歴記入欄に加え、小児のお薬の飲み方、坐薬の使用法の説明等も載せています。
 個人が自由に書き込んで利用することもできますので、是非ご活用ください。

大人の虫歯 ― ②

大人の虫歯 ― ②

新潟市東区山木戸4丁目7―7
 (中山木戸バス停前)
あゆかわ歯科医院 院長 鮎川幸雄


 先月号で記述したとおり、大人の虫歯の要因として、その多くは2次カリエス、根面カリエスといわれるものです。
 2次カリエスは、治療した詰め物や、被せものと歯との境界から入り込む虫歯です。
 根面カリエスは、歯周病や年齢により歯肉がやせて下がって、虫歯になりやすい歯根面が露出してしまうことによるものです。
 重度の根面カリエスは、根の周囲を帯状に広がることもあり、歯冠部分は健康でも、根の周囲をぐるっと削って治療することとなります。
 最悪の場合、健康なエナメル質の歯冠部が、ポロリと取れてしまうこともあります。
 予防としては原因であるプラーク(細菌の塊)の量をできるだけ減らすことが基本となります。
 そのためには、デンタルフロスや歯間ブラシなどを上手に利用することも重要です。
 根面カリエスは、早期に発見できれば、小さく削って詰めるだけで済むことも多いので、定期健診などで、早期発見を心がけてください。
 また齲うしょく蝕のリスクの高い方にはフッ素を使用し、歯質の耐酸性を向上させることをお勧めします。
 フッ素は子供のエナメル質の成熟期での使用の他、歯根の露出の目立つ高齢期でも効果が認められています。
 フッ素配合歯磨剤を十分歯根面にこすりつけて、不快にならない範囲の少量の水(10㎖)でうがいすることで、できるだけ多くのフッ素を口腔内に残し、うがいによる口腔内からのフッ素の消失を防ぐことがポイントです。
(終わり)

大人の虫歯 ― ①

大人の虫歯 ― ①

 

新潟市東区山木戸4丁目7―7
 (中山木戸バス停前)
あゆかわ歯科医院 院長 鮎川幸雄

 

 子供の虫歯は年々減少しています。特に新潟県の子供は全国的に見てもトップクラスの虫歯の少なさを誇っています。ところが大人の虫歯は減っていません。


 学校健診、フッ素塗布、フッ素洗口などで効果的に見守られている子供に対して、大人は自己責任の要素が強く、定期健診で積極的にお口のケアをされている方がおられる一
方、痛くなるまで放置され、様々な問題を抱えている方がおられます。

 子供の場合は虫歯になりやすいのは歯磨きしにくい奥歯です。大人の場合はそれとは違って多くが次の2つの要因によるものです。

 1つめは、2次カリエスといわれるものです。

 治療した詰め物や、被せものと歯との境界から入り込む虫歯です。境界は汚れがたまりやすかったり、治療後、数年すると隙間ができることもあり、そこから細菌が侵入し虫歯が進行します。以前の治療で神経を抜いている場合は痛みを感じず、被せものの内部で進行している場合は、表面上は変化が見えないので、気が付いた時にはかなり内部まで進んでしまっています。


 2つめは、根面カリエスと呼ばれるものです。
 歯周病や年齢により歯肉がやせて下がって、歯根面が露出してしまうことがあります。歯根面の象牙質は歯冠部のエナメル質と比べて柔らかいため、虫歯になりやすくしかも進行が早いのです。


 そのため若い時と同じように歯ブラシしているはずなのに虫歯になってしまいます。
 また高齢者は唾液が減少して、口腔内が乾燥することが多く、唾液による歯の修復機能が遅れ気味になることも、根面カリエスが多発化する要因になっています。


(次号へつづく)

マウスガードのすすめ②

マウスガードのすすめ ②

 

新潟市中央区東大通2-3-25山長ビル2階
りんご歯科医院 院長 澤口正俊
日本歯科大学新潟病院非常勤講師
歯学博士

 

 

 

 歯科医院で製作されるマウスガードは、カスタムメイドタイプと呼ばれ、口腔内の型を取り、模型を起こし、evaシートという弾力のある材料を軟化、成形して製作します。
 一層もしくは複数のシートを使用して一定の厚みで製作することができます。
 さらに、競技の特殊性から危険な部位を保護するため、意図的に厚くすることもできます。
 選手の背番号や名前も付けることができ、色も透明なものから、何色も織り交ぜたようなカラフルなものまであります。
 また、福利効果として怪我に対する安心感からか、思い切り競技に集中できるため、パフォーマンス力が上がることが報告され、筋力の向上も期待されております。
 実際に、私どもの研究からは5人の被験者から、背筋力計を使って計測すると、5人ともマウスガードを装着すると背筋力が向上しました。
 今後、スポーツ愛好者に関わらず、スポーツ初心者や学童にも外傷予防の観点から、マウスガードは必須のアイテムになるかと思われます。
 その効果を十分に発揮するためにも、マウスガード製作の際は、歯科医院で適合の良いものを製作されて頂きたく思います。

マウスガードのすすめ①

マウスガードのすすめ ①

 

新潟市中央区東大通2-3-25山長ビル2階
りんご歯科医院 院長 澤口正俊
日本歯科大学新潟病院非常勤講師
歯学博士

 

 近年ではスポーツ愛好家の間で、マウスガードが普及しつつあります。
 まだ耳慣れないように思われる方も多いかと思いますが、ボクシングや空手の選手が試合の際に、口の中に入れているマウスピースの事を言います。
 マウスガードの効用は、口腔内の歯牙や歯肉などを外力から守るのが主目的であります。
 ある報告では、中高生のスポーツ時の外傷で75パーセントが首から上の頭部にあり、その中でお口の中の障害が多く見られます。
 スポーツ時の外傷予防として使用されるものをマウスガードと言い、歯ぎしり予防のナイトガードや頻関節症治療用のマウスピースとは明確に区分されています。
 以前は格闘技の選手が装着するという感じが否めませんでしたが、近年では、アメリカンフットボール、ラグビー、サッカー、パスケットボール、野球、ゴルフ等の選手にも幅広く使用されています。
 このマウスガードはスポーツ店でも購入することができますが、これはボイル・アンド・パイトと呼ばれるタイプのもので、材料を温湯で軟化し、それを口腔内に入れて口を動かし、自らの口腔周囲の筋肉を動かして合わせていくものです。
 非常に簡便で価格も手頃ではありますが、素材の厚みが薄くなったり厚くなったりして一定ではなく、適合もあまり良くないのが現状であります。
 その点、歯科医院で製作されたものはカスタムメイドタイプと呼ばれ、口腔内の型を取り、模型を起こし、evaシートという弾力のある材料を軟化、成形して製作します。(次号につづく)

ハートリンク喫茶

ハートリンク喫茶

NPO法人
 ハートリンクワーキングプロジェクト
副理事長 林 三枝

 

 平成25年2月18日、全国で初めて、晩期合併症のある小児がん経験者の職業訓練を兼ねた就労施設となる「ハートリンク喫茶」が、新潟日報社新社屋メディアシップ(新潟市中央区万代3-1-1)の1階にオープンしました。
 本事業は厚生労働省がん臨床科学研究事業の一つで、新潟日報社の委託事業で行われています。
 毎年2000人前後の子どもが発症するとされる小児がんは、今では8割前後が治る時代になりましたが、全国に小児がん経験者は8万人~10万人いると推測されています。
 小児がんは、白血病や脳腫瘍をはじめ400種類以上あり、子どもに多いがんの総称で、その治療においては、強い抗がん剤の投与や、放射線照射、中には骨髄移植をする人もいます。
 小児がん経験者の多くは一般の方と変わらない生活をしています。
 しかし、治療による後遺症で(低身長や能力低下など数百種以上)晩期合併症が起きる人も少なくありません。
 二次がんの発症も見られるようになりました。
 また、その後遺症が就職の妨げになることが多く、社会で自立できるよう支援する仕組みが必要です。
 私どもは、大人になったその子供たちが直面する就労問題に、真剣に取り組んでいます。
 多くの皆様の、ご理解ご支援をお願いいたします。

震災を振り返って ― ③

震災を振り返って ― ③

 

有限会社ケンユウ  佐藤陽一
日本薬剤師会 認定薬剤師
認定実務実習指導薬剤師

 

 

私が石巻に入った5月は、すでに災害が発生してから約2ヶ月が経っており、配給、医療体制も比較的安定してきていると思われる時期でした。
 避難者が望むものをすべて渡し、手を差し伸べる時期は過ぎ、避難者が通常の生活に戻るための手助けをする時期に来ていると考えられました。
 臨時診療所では、医師の診察後、診療所で薬を渡すこともできましたが、患者自身で近隣の調剤薬局に行ってもらうことを勧め、今後は診療を再開しているかかりつけの開業医への受診を勧めるという形をとりました。
 「ここでもらえないのか」と言われる患者さんもいましたが、できるだけ普通の生活にもどるようにと話をして理解を得ました。
 避難所から通勤する人、学校へ通う子供達、避難所で寝たきりになっている年配者の姿を見ていると、何事もないことがいかに幸せなのか痛感しました。
 震災から早2年が経過しましたが、被害を受けた人たちの生活は、震災後2ヶ月の頃とそう大きく変わっていないように感じています。
 仮設住宅での生活を余儀なくされ、仕事も再開できずにいる被災者もまだ多くみられます。
 我々が今できることは、国に対して被災者への支援を継続して呼びかけていくこと。
 そして、ボランティアに直接参加することができない人達も、被災地の商品を購入していくことなどで間接的に地域を再活性化することができるのではないかと考えます。
 また、社員が快くボランティア活動に参加できるよう、会社の経営者や組織幹部の方々の理解と協力も重要な事と思われます。 (終り)

震災を振り返って ― ②

震災を振り返って ― ②

有限会社ケンユウ 佐藤陽一
日本薬剤師会 認定薬剤師 認定実務実習指導薬剤師

 

 

 

 避難所である石巻市立門脇中学校の体育館の更衣室が臨時診療所でした。
 この臨時診療所に受診する患者さんの病気は、ホコリの多い環境での寝起きによると思
われる上気道炎が最も多く、続いて、おにぎり、弁当、サンドイッチ、パン、インスタント食
品など、塩分の多い食料しか食べられないことが影響していると思われる高血圧でした。避難所の床に直に寝るので、他人が夜間歩くことで発生する振動などによる不眠といったものもあり、これらは実際に起こってからでないとなかなか考えられないことでした。
 受診時には、お薬手帳を持参する患者さんがほぼ100%で、医師は手帳を見ながら診療を進めていきました。お薬手帳は、震災前から使用している方、震災後にもらった物を使用している方がおり、「命をつなぐための重要な手帳」と話される患者さんもいました。この薬はどんな時にもらったかなど、自分で色々書き込んでいるものも見られました。
この時私はお薬手帳の重要性を再認識しました。医者任せ、他人任せの医療ではなく、体調管理を自分でするのだという心意気も感じられました。
 東日本大震災後、私が医療ボランティアとして入った宮城県石巻市は、津波により沿岸部はほぼ壊滅的なダメージを負った地域です。災害医療本部が置かれていた石巻日本赤十字病院でのミーティング時に、移動時には自分のいる位置をよく確認し、地震が発生した場合5分以内に高台に避難するよう、また暗くなる前に戻るように指示を受けました。
 避難所がある高台には家があり、庭があり、そこだけを見ると何事もなかったかのように思えました。しかし、後ろを振り返ると言葉を失う光景が一面に広がっていました。(次号につづく)

震災を振り返って - ①

震災を振り返って - ①

有限会社ケンユウ 佐藤陽一
日本薬剤師会 認定薬剤師 認定実務実習指導薬剤師

 

 

まもなく、東日本大震災の発生から2年になろうとしています。
テレビの衝撃映像では、津波の映像を何度か見たことがありましたが、実際に日本であれ程大きな津波がくるとは夢にも思いませんでした。
私にできることはないか・・・いてもたってもいられず、震災から約2ヶ月が経過した5月、医療ボランティア(薬剤師)として宮城県石巻市に入りました。
石巻市は、津波により沿岸部はほぼ壊滅的にダメージを負った地域です。
私が石巻市に入った頃には、報道も津波被害より原発に移行していったため、津波被害の方は少し落ち着いてきたのかと思っていました。
しかし、石巻に入って移動の車中で驚いたことは、道路脇には泥、壊れた車、家のがれきが山のように大量に残っていたことです。

 


 

空気には潮の匂い以外に、津波による別の被害を連想させるものも混ざっていて、本当に胸の詰まる思いでした。
私が訪ねた石巻市立門脇中学校の体育館には、二百人以上の避難者が一緒に生活していました。
体育館に差し込む光で、ホコリが舞いあがっているのが見えました。
「換気すれば?」、そう思いましたが、外気にはダストなどが混じっており、危険なので窓は開けないように指導していると聞かされました。
また、段ボールの仕切りだけで、プライバシーもなく、環境は想像していた以上に劣悪なものでした。

(次号へつづく)