医療コラム

認知症 ①

認知症 ①

総合リハビリテーションセンターみどり病院
副理事長内科医市原綾子

◎認知症は「症状」を表す言葉
認知症とは、特定の「病気の名前」ではなく、「症状」を表した言葉です。正常だった脳の機能が、何らかの脳の病気のために低下してしまった状態のことをいいます。認知症を引き起こす病気は80を超えるといわれています。症状を現している「病気」が何なのかを診断して、初めて治療方法を考えることができます。

 

◎正常な老化(ぼけ)と認知症は違う
患者さんやご家族は、認知症の初発症状を、年をとったせいで起こるものと勘違いし、認知症の初期症状を見逃している場合が多くあります。そのため診断が遅くなり手遅れになるケースもあります。手遅れにならないためには、 病気による認知症と正常な老化に伴う「ぼけ」とは異なることを理解する必要があります。

 

◎早期発見・早期受診の重要性
慢性硬膜下血腫や甲状腺機能低下症、ビタミンB群欠乏症などでも認知症が現れますが、早期に発見し、適切な治療を行えば、治る可能性があります。また、特別な病気を除けば、認知症が急に出現したり、症状がいっきに進んだりすることはありません。
そのような時には、どこか具合の悪いところがあるのではないか、薬による副作用ではないかと疑ってみる必要があります。
ですから、CTやMRI、認知機能検査などの脳の検査以外にも、血液検査などの全身を診る検査が必要です。認知症ではないかと疑われた時には、周囲の人達が、認知症の初期徴候を見逃さず、早期受診を勧めることが重要なのです。

しみ・しわ治療の落とし穴― ③

しみ・しわ治療の落とし穴― ③

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル2階
本町皮膚科 院長 渡辺力夫
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

 

昨年の、しみ・しわ治療の落とし穴― ②に引き続き、「しみ」の診断とレーザー治療について、もう少し詳しく述べてみたいと思います。

 

「しみ」の6割を占める老人性色素斑では、1回のレーザー照射で済む場合がほとんどです。そばかす(雀卵斑)は、2〜3ミリの小さな褐色調の「しみ」が顔に多発しているものです。これも1回のレーザー照射で、ほぼ消失します。太田母斑(青あざ)は、青色調・褐青色調の「しみ」が散在・融合したもので、まぶた・ほほ・側頭部などにみられます。Qスイッチレーザー(保険適応)で、ほとんどが目立たなくなります。褐色調のものは3回程度、褐紫色・紫青色調のものは3〜5回の照射が目安になります。

 

扁平母斑は、出生時または生後早期にみられる茶色の「あざ」であり、境界明瞭で色調が均一なものです。Qスイッチ・ルビーレーザー治療が保険適応ですが、消失しても再発したり、治療前より色が濃くなる場合もありますので、部分的な試験照射から開始します。

 

肝斑(かんぱん)は30〜40歳代の女性に多く、眼の周囲を避け、左右対称で境界明瞭な褐色調の「しみ」です。ひたい・ほほ・口囲にみられます。レーザー治療は有効性が確認されておらず、むしろ色が濃くなることさえあります。太田母斑などが肝斑と誤診されていることも多いですが、その場合は見かけ上、レーザーが有効であったようにみえます。悪性黒色腫(ほくろの癌)・基底細胞癌などは、手術・切除が基本です。

 

レーザーでは、癌細胞が周囲や体内に撒き散らされ、取り返しがつかなくなることもあります。顔のほくろ(母斑細胞母斑・色素性母斑)に関しては、ほくろの細胞(母斑細胞)が中年以降に皮膚深部へ移行する傾向にあります。その場合には、Qスイッチレーザーなどを照射しても再発します。

 

色素をもたない母斑細胞や隆起性のほくろには、パルスレーザーが無効であり、手術・切除するしかありません。5ミリくらいまでの顔のほくろであれば、通常の切除でもほとんどが目立たなくなります。ほくろにおいては、皮膚科で最も悪性である悪性黒色腫との区別が重要です。わずかでも悪性の疑いがある場合には、手術・切除して病理組織を必ず確認しておく必要があります。

 

ある施設で顔の「しみ」ということで施術を受けている患者さんがいました。自由(自費)診療でしたので、1回につき、1万円〜2万円前後の施術料を支払っていたそうです。何回か施術を受けた後に、私が診察することになりました。しかし、その「しみ」の正しい診断は基底細胞癌でしたので、さっそく手術となりました。

 

「しみ」は診断名ではありません。心配・不安なとき、何かおかしいと思った場合には、施術者に「診断名」を聞いてみることです。レーザーを施行しないほうが良い「しみ」、レーザーが無効な「しみ」も多く存在します。診断名がはっきりしない場合や、幾度も施術を受けて高額な費用を払い続けている場合には、十分な注意が必要です。
( 注:文中のレーザー照射の回数は目安であり、確実に消える回数ではありません。)

ドライアイについて

ドライアイについて

しもまちメディカルセンター
(新潟市中央区田町 旧済生会新潟病院あと)
 いかい眼科 院長 井海雄介
  日本眼科学会認定眼科専門医 
  眼科PDT(光線力学的療法)認定医

 

パソコンやテレビ、携帯電話の画面などを見続ける生活により、知らず知らずのうちに目を酷使し、その結果、目が疲れやすい、あるいは何となく目に不快を感じるという人が増えています。


こうした疲れ目などの原因として最近注目されているのが眼の乾き、ドライアイです。一般的なオフィスで30%、コンタクト装用者で40%がドライアイとも言われています。

 

ドライアイは、文字通り、涙の量が足りなくなることだけではなく、涙の質や成分が変化したりすることによって、目の表面のバランスが崩れ、傷などを起こす目の病気です。「眼が乾く」と感じる人は意外に少なく、なんとなく目に違和感がある、目が疲れる、というような不定愁訴としてあらわれます。充血、目が重い、しみる、ヒリヒリする、などのほか、時間がたつと目がかすんでくる、など、さまざまな症状がでてきます。生理的に涙の質、量が減ってくる高齢者・乾燥した室内で長時間のパソコン作業・コンタクトレンズ装用者・レーシックなど近視矯正手術を受けた人など、若年者から高齢者まですべての年代でドライアイになる可能性があります。


治療は、涙液産生量が低下するタイプのドライアイには、水分を保持する効果のあるヒアルロン酸を多く含む点眼を使用し、一方、涙液の蒸発量が増加してしまうタイプのドライアイには、蒸発量を抑え、涙液の質を改善させるためにムチンという粘液物質が入った点眼を使用します。点眼で改善しない場合は、涙点プラグ挿入治療を考えます。

 

涙点と呼ばれる涙液の排出される穴に、シリコン素材でできた栓(涙点プラグ)を挿入して、涙液が目の表面に溜まるようにする治療です。取り外しも簡単なので安心、手軽に出来て、治療効果の高い方法です。ドライアイの検査は痛みや我慢を伴うことはないので、気軽に眼科専門医を受診して下さい。

しみ・しわ治療の落とし穴—②

しみ・しわ治療の落とし穴—②

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル2階
本町皮膚科 院長 渡辺力夫
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

 

前回は「しみ治療施術前・施術後の画像・写真」に注意しなければならないことを述べました。今回と次回は「その“しみ”治療は本当に正しいのか」「レーザー等が無効な“しみ”に施術し続けているために、何度も通院し、高額な施術費を払うはめになっているのではないか」ということに触れてみたいと思います。

 

「しみ」は以下に大別されます。黒色調のものに、母斑細胞母斑(通称「ほくろ」;以下同様)・老人性色素斑(しみ)・悪性黒色腫(ほくろの癌)・基底細胞癌などがあります。褐色調のものに雀卵斑(そばかす)・肝斑(しみ)・扁平母斑(あざ)など、黒褐色調のものに扁平な脂漏性角化症など、青色調のものに太田母斑(青あざ)・青色母斑などがあります。よく見る「しみ」・注意が必要な「しみ」を簡単に挙げただけでも多数ありますので、診断には十分に注意しなければなりません。

 

「しみ」の6割程度は、老人性色素斑であるとされています。境界明瞭で類円形の「しみ」であり、中年以後の顔や手背などの露出部に多く見られます。Qスイッチレーザーを1回照射しただけで、ほぼ完全に消失する場合も多いです。ただし、IPL(アイピーエル)などと呼ばれる光発生装置はレーザーとは異なります。レーザーより照射エネルギーが低いために、治療効果は不十分となりますので、結果として何度も照射を受けなければなりません。その分、費用がかかります。そばかす(雀卵斑)にもQスイッチレーザーが有効であり、1回の照射にて、ほとんどが消失します。「しみ」の中でも、肝斑にはレーザーが無効です。肝斑が太田母斑と誤診されていることも多々ありますが、その場合には見かけ上、レー
ザーが有効となります。

 

「しみ」は診断名ではありません。様々な色素性皮膚病変の総称です。レーザー治療が無効な「しみ」、むしろ施行しないほうが良い「しみ」も多数含まれているのです。ダラダラと高額な費用を払い続けている場合などには、十分な注意が必要です。次回は、「しみ」の診断とレーザー治療について、もう少し詳しく述べてみたいと思います。

 

本町皮膚科ホームページ:http://www.honcho-hifuka.com/

しみ・しわ治療の落とし穴①

しみ・しわ治療の落とし穴①

本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル2階
本町皮膚科 院長 渡辺力夫

 

加齢とともに「しみ」「しわ」が出現してきます。若い頃に見られなかった皮膚の変化・老化はどうしても気になりますし、多少のお金を支払ってでも肌をキレイにしたいものです。美的意識が向上した現代ではなおさらであり、高齢化社会に伴って需要は激増しています。

 

市場は莫大ですので、お金儲けをしたい業者や医療関係者なども、どんどん参入してきます。医師が施術するにしても、基本的には自由(自費)診療ですので、保険が使えず、高額になります。しかも大抵は、一度や二度で終了するものではありませんので、結果的に十万円〜二十万円以上も費やしてしまうことも多々あります。患者さんが疑問に思って質問しても、「何度も施行しないと効果がない」「あなたは効果があるほうだ」などと言われ、非常に高額な施術費を払い続けている場合もあるようです。その結果、耐えきれずに私の医院を受診される患者さんも多いです。「こんなはずではなかった」と思わないためにも、施術を受ける側も、ある程度の知識を持つことが必要です。

 

まず、宣伝に利用される画像に注意する必要があります。「施術前・施術後」と対比して提示・宣伝される写真です。例えば「しみ」治療の場合、純粋に「しみ」の色がうすくなった場合に「効果あり」と判定されるべきです。ところが良く見ると、施術後の顔全体が白くなっている場合が多々あります。写真さえ撮れば、小学生でも簡単に画像を操作できる時代です。顔全体を白色調に処理すれば、「しみ」も結果的にうすくなって見えるのです。施術を受ける側の興味は「しみ」の色調に集中していますから、顔全体の微妙な色の変化には気付きません。また、全く同じ条件で写真を撮っているかどうかも重要です。施術後写真の照明を明るくすれば、顔が施術前より白くなるわけです。ときに、施術後写真では、うすく化粧をしていることさえあります。口紅の赤い色を強調すると、相対的に他の部位の色調が目立ちにくくなる効果もあります。

 

自分の治療で「しみ」が非常にうすくなると宣伝する方がいました。施術後の写真を数枚見ると、全員の顔全体が微妙に白くなっていました。そこで、顔全体に照射しているのか尋ねたところ、そうであるとの返答でした。しかし、「しみ」だけしか治療していないという写真でさえも、施術後は顔全体が白くなっているのでした。「しみ」だけの色が本当にうすくなっているのか、その施術の効果が本当にあるのか、十分に注意して前後を比較する必要があります。

 

宣伝する側は、最もうまく撮れている写真しか提示しません。当たり前ですが、うまくいかない例は一般に提示されません。一番キレイな例を見て、自分も同様になると錯覚しないように注意しなければなりません。

 

次の機会には、「その診断は正しいのか・その治療が本当に有効な“しみ・しわ”なのか」「それは本当にレーザーなのか・何度も施術を受けなければならないもので、結果的に多大な費用がかかるのではないか」「医師が作った化粧品もあるが、本当に有効なのか」など、順に述べていきたいと思います。

タバコの害と禁煙治療

タバコの害と禁煙治療


本町6アーケード内 ぷらっと本町ビル3階
本町いとう内科クリニック 院長 伊藤 実
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医

 

タバコは、16 世紀以降全世界に広がり、20世紀に紙巻きタバコが大量生産されるようになってから多くの人が喫煙するようになりました。しかし、体に有害であるという報告が次々と発表されてから欧米でタバコの規制が始まり、喫煙率が急激に低下しました。

 

日本ではタバコ対策が欧米に比べ10~30年遅れているといわれており、タバコの有害性に対する認知度も低いのが現状です。外国では、タバコのパッケージに「喫煙は、致命的な肺癌を引き起こす」などのメッセージとともにショッキングな生々しい写真が掲載され、タバコの値段も高価です。日本では、国がたばこ産業を保護する立場にあり、また、たばこ税を安定した税収として重要視していることが、欧米に比べタバコ対策が大幅に遅れている原因の1つと言われています。


今回、タバコが値上げされましたが、喫煙者を大幅に減らし、国民の健康を守るためには、1箱1000円程度に値上げすべきだという意見もあります。タバコの煙が直接影響するものとして、喉頭癌、肺癌、食道癌などがあり、肺の老化が急速に進んでCOPDになってしまうこともあります。その他多くの癌が発症しやすくなります。また、喫煙者は血管がつまりやすくなり、心筋梗塞、脳梗塞などで急死したり、手足が腐ってしまうこともあります。血管がぼろぼろになるため、皮膚や眼などを含め、全身の臓器に影響が及びます。2004年に発表された論文によると、タバコを吸う人は吸わない人に比べて寿命が平均で10年も短いことが分かりました。周りの人もタバコの煙を吸い込んで同じような害を受けることが知ら
れており、特に子供や妊婦の前では絶対にタバコを吸ってはいけません。


タバコをやめられないのは、麻薬と同じで離脱症状が出てしまうからです。そのため、喫煙本数が多く依存性の高い喫煙者は「ニコチン依存症」という病名で、保険診療にて禁煙治療ができることとなりました。従来のニコチンパッチよりも有効性の高いチャンピックスという内服薬も使用できるようになり、禁煙の成功率が高くなってきていますので、喫煙者は禁煙治療をお受けになることをお勧めします。

処方せん調剤薬局について

処方せん調剤薬局について

本町6アーケード内ぷらっと本町ビル1階
  しなの薬局 本町店 薬局長 田中悠介
     日本薬剤師会 認定薬剤師

 

処方せんを応需する薬局と聞くと、ただ薬をもらうだけという印象が強いです。しかし、「調剤(専門の)薬局」では、医師の処方せんの全ての薬の飲み合わせ・副作用を、経験を積んだ薬剤師が説明し、患者様に薬をお渡ししております。また、処方元の各医師と連携を取り、治療方針を理解したうえで薬を調剤し、説明をいたします。薬を服用中に体調が変わったり、薬の内容で気になることがありましたら、調剤薬局の薬剤師に何でも御相談ください。薬に限らず、健康で気になることなどでも、何でも気軽に相談することができます。


本町通りの「ぷらっと本町ビル1階」にある『しなの薬局本町店』は、ビル4階のぷらっと本町クリニック、3階の本町いとう内科クリニック、2階の本町皮膚科、1階の本町みゆき歯科の処方せんをはじめ、全国どこの医療機関の処方せんも受け付けております。特に、本町またはその周辺の整形外科、耳鼻科、小児科、産婦人科、眼科、心療内科などの薬も取り扱っておりますので、様々な科に対応した総合薬局として機能しております。


複数の医院・診療科から薬を処方されていても、病院と同様に薬の相互作用・副作用を加味した上で患者様に説明いたします。また、医療機関の薬の組み合わせなどで不都合がある場合には、薬局がその医療機関に確認した上で患者様に説明いたします。

 

当薬局では生活習慣病の患者様用の料理レシピの無料配布をはじめ、様々な指導やサービスをしております。お肌のケアでは低刺激の肌ケア用品を取り揃えており、サンプルを無料でお渡ししています。待ち時間を快適に過ごして頂くために、自動販売機のドリンクを無料で提供しておりますので、是非ご利用ください。公共の交通機関を利用されて医療機関を受診された患者様で、お薬をお急ぎの方には、個別で相談・対応をさせて頂きます。


薬が処方された際は、是非『しなの薬局本町店』をご利用ください。

「歯周病が治らないな」と思ったら

「歯周病が治らないな」と思ったら

 本町6アーケード内ぷらっと本町ビル1階
        本町みゆき歯科 院長 佐藤三幸
        歯学博士

 

私ども歯科医師の仕事は、「残存組織の保全」と「機能回復率の向上の両立」です。すなわち現在のお口の歯、歯肉、骨など現状組織を長く維持していくことと、咀嚼(食べる)機能、嚥下(飲み込む)機能、呼吸機能、発音機能、姿勢維持、審美など諸機能を回復するとともに向上させることであります。特に「残存組織の保全」には“力のコントロール”と“細菌のコントロール”が大きく関与します。今回は、国民の8割に発症しているといわれる歯周病について、この2つのポイントについて解説したいと思います。
歯周病も一般の病気と同じように早期発見、早期治療が大切です。

 

歯科医院ではどの程度歯周病が進んでいるのかなどを検査によって把握し、治療計画を立てます。そして個人個人にあった歯磨きの方法を覚えていただき、実行することでお口の中全体の細菌数を減らす努力をして頂きます。さらに生活習慣も治療に影響するため、喫煙や疾病などを含めた生活習慣についても指導致します。患者さんと歯科医師と歯科衛生士の三者の協力がないと歯周病は治りません。
次に歯周病の原因の1つである「細菌のコントロール」をするため、歯肉のポケットに溜まったプラーク、歯石そして細菌感染した組織を専用の器具を用いて取り除きます。


この時点でどの程度改善したかをチェックしますが、悪い部分についてはさらに歯周外科治療を行うこともあります。最終的に炎症が治まり、引き締まった歯肉になったら治療は終了です。しかし、歯周病は再発しやすい病気です。油断するとまた元に逆戻りです。治療が終わっても定期的に検診を受けて再発を予防することが望ましいと思います。


しかし、なかなか改善しないこともあります。その原因には、喫煙や糖尿病など先に述べた生活習慣も大きく関係します。そしてもう1つ、夜間ブラキシズム(歯ぎしり)が影響していることが多くあります。歯周病に罹患し、炎症が周囲組織に波及しているところにブラキシズムによるメカニカルストレスが加わると、炎症は急速に進行し骨吸収を引き起こします。この場合には「力のコントロール」のため噛み合わせを調整したり、マウスガードを夜間装着して過剰な力が歯に加わらないようにします。 

 

歯周病は再発しやすい疾患で、しかも生活習慣とも大きくかかわる病気です。「細菌のコントロール」と「力のコントロール」を行いながら、定期検査を受けて常に良好な環境を維持できるよう、歯科医院を受診することをお勧め致します。

いびきと交通事故 ~睡眠時無呼吸症候群について~

いびきと交通事故
~睡眠時無呼吸症候群について~

独立行政法人国立病院機構 西新潟中央病院
日本呼吸器学会認定 呼吸器専門医 伊藤実

 

いびきと交通事故は全く関係ないと思うかもしれませんが、大いに関係があります。それは、睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)という病気を知ることで理解できます。


SASは、文字通り睡眠中に呼吸が止まるのですが、呼吸が止まってそのまま死んでしまうのではなく、気道が閉塞し一時的に呼吸が止まり、覚醒と共に呼吸が再開する、ということを一晩中繰り返す病気です。この覚醒は、脳波上で確認されるだけで本人は自覚していないため、一晩中ぐっすり眠ったつもりでも、眠くて食事中や運転中にまで居眠りしてしまいます。


仕事の意欲が低下し、うつ病と診断される方もいます。以前ニュースになった新幹線の運転士の居眠りがSASによるものであったことが判明してから、SASがより注目されるようになりました。交通事故原因として、SASによる居眠りが非常に多いことも分かっています。また、頻回な呼吸停止のため心血管系に負担がかかり、不整脈、心筋梗塞、脳梗塞などにより突然死する危険性が高いことが知られています。


いびきをかいていると良く眠っていると思いがちですが、いびきというのは、空気の通り道である気道が閉塞しかかっている状態であり、SASの患者さんに多い症状です。寝不足でもないのに日中眠い場合はSASを疑います。


SASは、肥満により上気道へ脂肪が沈着することにより発症することが多く、メタボリックシンドロームとも関係が深い病気です。やせていても生まれつきの骨格の関係で発症してしまう方もいます。中等症以上の場合、CPAPという、鼻につけたマスクから空気を送り気道を広げて無呼吸を防ぐ方法が最も有効性が高く、保険適応となっています。CPAPにより症状が劇的に改善する方もいらっしゃいますし、きちんと使用できれば突然死の危険性は健康な人並みに減ることが分かっています。


いびきをかく方、居眠り運転で事故を起こしたことのある方、血圧が高い方などは、一度SASの検査を受けることをお勧めします。呼吸器専門の医療機関で精密検査・治療を受けることができます。


*SAS=睡眠時無呼吸症候群

老化による皮膚のカサカサとは…②

老化による皮膚のカサカサとは…②

前 新潟大学医学部皮膚科学教室 講師
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
渡辺 力夫

 

前回のこのコラムにて、老化による皮膚のカサカサは「乾皮症または皮脂欠乏性湿疹(皮膚炎)」と呼ばれる病態であることと、それらの原因と症状について説明しました。今回は、それらに対する治療法や、日常生活における注意点について述べたいと思います。

 

まず、皮膚の乾燥により乾皮症が生じ、かゆみを伴うために引っ掻くことによって、湿疹化していくことを理解する必要があります。したがって、低湿度な環境や過度の洗浄による乾燥に注意しなければなりません。高齢者では、環境の整備や外用時の介助など、家族の協力が不可欠であることも多いです。
乾皮症に対しては、ワセリンなどの油脂性軟膏や保湿・吸水能を有するヘパリン類似物質などを、乾燥の程度に合わせて1日1〜2回外用します。外用剤は、皮膚表面に被膜を形成して皮膚を保護し、水分の蒸発を防ぎます。


入浴後は、しっとりとした皮膚に水分を閉じ込めるように、10〜20分以内に外用すると良いでしょう。皮脂欠乏性湿疹に対しては、症状に応じて副腎皮質ステロイド外用剤を併用することもあります。

既に生じてしまった皮膚の炎症を抑えるためです。軽快後は、前出の保湿剤だけに変更します。かゆみが非常に強い場合には、抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)の内服を併用します。掻くことによる更なる悪化を防ぐためです。


日常生活では、皮膚の清潔と潤いを良好な状態に保つスキンケアが重要です。入浴はぬるめとし、石鹸は過度に使用しないようにします。ナイロンタオルは使用せず、手のひらなどでやさしくこするようにします。過剰な暖房を避け、低湿度にならないように加湿器を併用します。電気毛布やこたつは、皮膚の乾燥の原因となることも知っておくと良いです。


たとえ老化による皮膚の症状であったとしても、その患者にとっては重大な悩みである場合も多々あります。受診時に「老化」と言われて単に流されてしまい、事務的に薬だけを処方されるのでは理解しにくいとも思われます。診断名、原因、治療法を詳しく説明してくれる医療機関の受診を、お勧めしたいと思います。